おいしいコーヒーを ひとりで飲む

それだけを目標にして生きていってもよいのではないかと思える日がある

まあなんというか 気取っているのかもしれないけれど そんな日もあるな

学校の近くによく行く定食屋があって、それでもあまり目立たないところにあるので、教員があまり行くことはなく、ランチにひとりで頻繁に通っていた

友達がいないのかと問われればそうかもしれないが、よほどでない限りひとりでいることが好きというのはある

そしてその定食屋の料理人、ひとりでやっている

舌足らずなしゃべり口で、無謀にもこの俺に果敢に話しかけてくる

あまりこういう状況で俺みたいな人間に話しかけてくる人物はいないのであるが、この男とはどこか気が合うところがあったのかもしれない

この男、定時制高校を中退したという

これまで教員生活のほぼ半分を定時制高校で教えてきた

さまざまな苦難の状況を抱え、必死で生きていこうとする生徒たちをたくさん見てきた

そういうこともあり、なんとなくわかりあえるところがあったのかもしれない

いつも料理を大盛りにしてくれたな

俺は特に望んでいないにもかかわらず

その店も2年ほど前に閉店となった

事情はよくわからないが、店はもう終了になるという

最後の日にも訪ねたが、閉店になることには変わりがない

そしてその場所に最近新しい店がオープンした

昭和の香りの色濃い以前の店と違って、観光客が訪れたりするようなこぎれいなカフェ風の定食屋

料理の素材にも緻密にこだわっていて、健康食であり、あったかい感じのする週替わり定食を安くで提供している

洗練された感じの料理人が爽やかな屈託のない笑顔をそれでも控えめに投げかけてくれる

そして食後のコーヒー

食後のコーヒーを飲む

おいしいコーヒーを飲む そのことを目標にして生きていってもよいのではないかと

時代は移り変わり、人は行き過ぎるけれど

それでよいのではないかと、静かに思いました。